2005年09月09日

くどいくらいに、ブランドとは

何度となく書いたこのテーマ。まとまったらそのうちカテゴリ分けしようかな。
私事ながら、就職して半年、色々と仕事を覚え、知識も増え、実際にこの仕事に関する知識はそれなりにあるといえるのだけれど、職業は何か、どんな仕事をしているか、そう聞かれた時に職業として仕事を出来ているとはまだ言えない。任される仕事があったって、本来スムーズに行われて然るべきところの手際が悪かったり、スポーツ選手で例えれば新人選手が育成をかねて出場するとき、それは試合に勝つという目的を果たすために雇われて出場しているのとは事情が異なり、取引先(BtoB)である球団においてもまた球団の顧客(BtoC)であるファンにおいても将来的な、球団においてはチーム運営上、ファンにおいては未来のスターを応援するためという勝負とは違うフィールドで仕事を行っているということになる。
前置きがずいぶんと長くなったが、駆け出しデザイナーは無論デザイナーというポジションに到達しておらず、様々なスキルやノウハウを得てある程度の感性と技術が固まって初めてそれに基づいたものづくりが出来るようになる。
そんなわけで常々疑問に思い、また苦言を呈しているのが、厳しく言ってしまえばニーズもないのに日々ものすごい速度で増えている自称ブランドの乱立だ。
店を構えるでもなく部屋の片隅でワックスを彫って鋳造屋に銀にしてもらう、これだけなら駅前でギターを鳴らしているのと変わりないというかむしろそれよりも手っ取り早い。さて駅前でギターをかき鳴らしてプロギタリストと言って誰が感心するだろう?

断っておくが制作者の増加自体を斜に構えて否定しているわけではない。ユーザーが増えることがもっとも望ましいのは確かだが、制作者が増えることで少しでも活気付いてくれたらそれは意義のあることだ。
しかし制作者が増えることとブランドが増えることは必ずしもイコールであることはない。なぜ、ブランドを興す土台もなく次から次に真っ先に看板を掲げるのか。ひとつにはそういう流れというものがなんとなくこの業界の定番だからなのかもしれない。
反発もあろうが、自分の好きなものが作りたいから、企業では感性が生かせないから、という声に関して僕は懐疑的なところがある。本当に生かせないのか?作れないのか?有名ブランドのデザイナーとして名を馳せ独立というのはファッション業界では決して珍しいことではないし、アメリカのブランドではクロムハーツ出身だとか何とかいうのを良く見かける。あの、ガボールの遺志がどうとかいうのはしょうもない売り文句だと思うけど。
企業のワークフローのなかで限られた領域だとしてもそれをこなすこともせずいきなり全部自分でというのはなんだか考えなしのような気がするし、何より現場で技術を蓄えようという向上心が欠けているケースもあるのではないだろうか。独学腕一本でやってきた、というロックなブランドも数あるが、それはまれなケースであるし、それならそもそも専門学校に行くのもやたらと同業者というか同じような境遇のコネクションを増やしまくるのもどうかと思う。某工房では雑誌に出たら客よりそういう新米がコネを求めて来るようになってしまったという話も聞いた。
何が言いたいかというと、口では色々言えるけれども結局行動力不足なんではないのかと思わせられるような自称ブランドがあまりに多いということだ。
すごい原型を作る腕が欲しければそのような下積みをしたらいい。そうすれば自分の好きな造型をより高度に再現できる。そりゃあ、宝飾は中小が多いから就職は簡単じゃないかもしれない。だからってなんでブランド立ち上げなのか。準備しようとは思わないのか。
重ねて言うがなにも立ち上げることが駄目だというわけではないし、結構インディーズブランドをひいきにしている事実がある。だけれどもそういう人は本当に一握りで、結局多くはブランドといいつつ副業もしくは趣味の制作物を売っているに過ぎない。プリントTシャツと一緒だ。
僕がこんなにこだわるのにはやっぱり結局のところ、物を売って人からお金をもらうということをなんだと思っているのかという風に見えるということがあるのだ。
まして万単位なんて、どれほど大きな買い物か。月給で3個も4個も買えるものではないし、そんなに頻繁に買うものでもない。半永久的に使用できるものであるし消耗品として使われたくて作っている人などいないだろう。
書いたかもしれないが、とても気に入ってくれたお客さんがいたとして、愛用しているブランドがパタといなくなったらどうだろう。ティムキャンピーなんかは結構売れたが、中には大ひいきにした人もいるんじゃないだろうか。それが気づいたらなくなってしまっているというのは、ちょっと悲惨な気がする。まだアメリカではやってるのかな?本職があるだろうけど。
要するに、自分が万単位の額を貰って売って、それっきり、売りっぱなし、ではどうしようもないということ。さすがに金を受け取るのだから、ましてや個人経営のレベルでは、感激もひとしおだろうから「そんなことないわ!」と思うのだろうけれど、そのありがたみだけでなくその取引の意味というもの、受け取ったものの重みというものをしっかりと受け止めなければいけなくて、残念ながらそこまでの覚悟というものが見えずに、「作った、だから売る」みたいな、言ってみれば軽いノリであわよくば金を貰おうというのがあまりに多く、それはちょっと残念というかものによってはムッと来ることもある。
どうしてこういう発想がないのかなあ、と思うんだが、自分の作ったものを発表したいという気持ちならば初めのうちから採算など考えずに原価でお分けしますとか個数決めた上であげちゃうとかしたらいいと思う。小売より展示会を中心に活動する人もいるわけで、創作と割り切るなら見せることを中心に考えるべきなんじゃないだろうか。
ネットには多くの絵描きがいて、皆すごく手間隙、時にはコストもかけているけど、それを有料サイト公開なんて形にはしないしそんなことして見てくれる人がいないことも皆わかってる。
アトリエや工房を開きたいなら資金をためて開業するべきだし創作活動の中で認められてブランドを作りたいというならさっきみたいに見せる手段を考えていくべきだ。デザイン系の仕事をしながら起業を目指すのもひとつだろう。ましてこの会社設立が簡単な時代、そして自称デザイナー・クリエイターがあぶれている時代。メンツを集めて会社を興したっていい。事務や営業がいればなおいい。専業ではどの道一本立ちしていないなら失う物だってないんだから。
ただ作って値段つけてブランドなんていうのはおこがましいし怠慢だと思う。コネをと言うより勉強だと思っていろんなお店や工房を回るのも何かの取っ掛かりになり得るだろう。僕だってそうして広げているわけだし。
工房や会社や店やアトリエを持つことはもはや「やめられない」ことを意味するがユーザーにしてみれば「つくるのやめた」でバックレが利くフーテンデザイナーよりよほど安心だ。店があるだけで「ちゃんとやってるんだなあ」と思う。逆に言えばリスクを勘定して二の足を踏むということは、どこかのブランドスタッフでの独立ならまだしも、ある意味「本当にブランドをやるか否か」の選択での場合は、所詮趣味でやっていたと自ら言っているようなものだ。
起業ブームなんて言葉があるようにやりたいことをやる人はたくさんいる。シルバーなんて狭い市場で、何億もの在庫を作るなんてこともありえないのだから、本気で夢を描くならただ漠然と片手間でワックスを削る行為をブランドなんていうのはやめにして欲しい。
そんなんだから誰にでもできるって言われるんだ。趣味はアクセサリーって言うと「作るの?」って真っ先に聞かれるんだ。


posted by 遼 at 00:54 | Comment(13) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
言いたい事はよく分かります。
ZEKEをこと三年やってきて、見えてきた展望も最初の頃とは変わった形になりました。
でも、確かな展望になった事は間違いないのです。
自宅でWAXを削る奴に、中途半端な奴らは確かにたくさんいます。でも、そうでない奴も確かに存在する事もわかって欲しいです。
製作者の意見によってしまいましたが、始め方を攻めないでやって下さい。遠回りをしても、目指す場所が変わらないのならきっとその中で成長していくはずです。

まぁ、そういう奴は逆にこういう記事で燃えたりするんですけどね(笑)
Posted by ZEKE at 2005年09月10日 01:59
ええ、もぅ、そりゃあ。でも、「そういう奴」って、結構それが見えていると思いますよ。アビチンとか、ボルテックスとか、プロ志向がはっきり出てますもの。
「そうでない奴」の商品が実際そう売れることもないんだろうな、とは思いつつ、せっかく作るというスタートを切ったのに、何やってんだろって、正直思うんすよね。
記事をどんな人が見てるかわからないけど(笑)燃えてくれる人が一人でもいたらなーなんて。

ブランド立ち上げ年数が初商品でてからの年数の数倍なんていう人を見かけました。何のブランドだ。そんなお話です。うぅ。
Posted by 遼 at 2005年09月10日 03:50
アンタの好きなカットに書いたら?って思いました。
だって正直自称デザイナーばっかりと思うのですが…その辺りはどうですか?
Posted by at 2005年09月10日 07:17
企業では自分の好きなものはまず作れません。あけてもくれても作業です。
店を出す。普通にバックレル人わんさかいます。会社も同様。
結構理論が穴だらけ。推敲してからアップするようにして下さい。
Posted by _ at 2005年09月10日 17:11
んなこと、言ったら何の世界もそうだよ。
あんたももっと他の世界みたら?
そのなかでどうするかって話ジャン
Posted by at 2005年09月10日 17:44
1 カットでも十分言ってますし、特に反論もないです
カット含めて言ってます

2 おっしゃることはわかりますが、それとブランと立ち上げることに関して云々は別と思いますが。ちょっと主張がわかりません。
内容への意見はありがたいんですがアップするなっていうのは筋じゃないと思います。

3 これは記事に対してですか?
Posted by 遼 at 2005年09月10日 23:51
いや管理人さんに対してじゃないですよ

>企業では自分の好きなものはまず作れません。あけてもくれても作業です。

これに対してです。そんなの社会出れば当たり前ですよね、例を持ち出すまでもないぐらいに。
Posted by at 2005年09月11日 00:07
1の名無しですが返答どうもです!
ぶっちゃけ結構マメにココ見てます!
遼さん的にカットってどうなんですか?
Posted by at 2005年09月11日 00:09
失礼しました。
極端な書き方をしたので、反発もあるかなとは思っています。
その中でどうするかの話、というまさにその通りの話です。

色々リアクションいただけたので言いますが、インディーズといわれる物をこれだけ見ているのはもちろんこき下ろしたいからではなく、そんな暇でもないです。
文句にこんな労力は使いません。
Posted by 遼 at 2005年09月11日 00:24
通りすがりと思ったので便宜上で勝手に1ってしてすいません(笑)
さっきカットBBSにも書きましたが今出てる人たちは技術の未熟な人も技術先行の人もあれど結構いいなと思いますよ。
カット関連記事をさかのぼるとわかると思いますが、結構批判的な見方もしてたんです。それこそインディーズとはいえプロの集まりではない上に、パフォーマンス先行になりかけてたときもあって。
今はZEKE中心にやっと宣言が意味を持ち始めたりしてきたかな、と思うんですが、参戦数が減っちゃってなんかちょっとタイミング悪かったかな、と。
デザインのセンス的にもスカル率が高いときなんかはスカルも色々とは言えどうなんかっておもいましたが・・・結構それぞれの色が出始めてるかなと。終わりますけど。(笑)
Posted by 遼 at 2005年09月11日 00:33
全然知らない業界なので毎回楽しく読んでます。
ただワガママを言ったらもう少しマメに更新して下さい!毎回楽しみにしてるんで(笑)
Posted by 1って事で! at 2005年09月11日 01:27
最後のくだりが悲痛で涙を誘います。
そうですよね・・・
Posted by at 2005年09月12日 02:38
遅れましたー
僕も業界人ではないので、偏向もあるし得手不得手ある上に最近じゃ時間なくて新しい物を見ることが出来てないんですが、暇を見つけて書いてる感じですね。
そんな感じなので、正直書きたくてもなかなかかけないのが事実なのですよ(笑)申し訳ない、がんばります!

>最後のくだり
作ってると思われることですかね?(笑)
泣くようなことではないんですが、こう、世間とのズレみたいな・・・
もちろんそうじゃないって言ったあとは詳しいやつなんだなあ、と色々聞かれたりもするんですが。
Posted by 遼 at 2005年09月12日 23:36
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