まず、ブランドの機能、要素について。
・名前:名前。
・品質:ブランドの高品質ぶり。
・象徴:ブランドのシンボル。
・デザイン:視覚的な特徴。
・ロゴ:視覚的な特徴2。
などなど。「ブランディングは精神的な構造を創り出すこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理すること」
「ブランディングにとっての鍵は、ある製品カテゴリー内で消費者が知覚するブランド間の差異である」(ケビン・レーン・ケラー)
まあ、これだけで十分といえば十分かもしれない。でもそれだとあんまりなので、もうちょっとシルバー業界に絡めて掘り下げてみる。
ブランド、元を正せば「焼印」。カーフブランディングって技がある。仔牛の焼印押しと訳される。要するに、ネームタグ的に、牧場の牛に焼印を押すのだ。賭博黙示録カイジで、ギャンブルに負けて売り飛ばされる人々にも焼印が押された。まあどうでもいいけど。
美術品には作家名が押され、本には著者名が記される。当たり前のことのようだが、単に物を売って金を稼ぐだけならそんな必要は実際はなく、事実ブランドになっていない会社などいくらでもある。
牛に印を押すのは、群れの中で自分の所有する牛を間違わないためだ。
つまりブランド間の差別化。
ブランドとは競合他社との差異を、ロゴ、名前、デザインなどで知らせる意味がある。
シルバーアクセサリー業界で、わかりやすいブランドとしてクロムハーツを挙げてみよう。
・「言わずと知れた」といえるほどの知名度。
・一般には「おおっ」となるネームバリュー。
・一目でわかる有名デザイン多数。
・根強い「トップブランド」の認識。
・高級イメージ。
はっきり言って明確である。
すでにシルバーアクセサリー市場のみならずファッション市場に身を置いているといってもいい。当然消費者層も広まる。
さて、上記「意思決定の単純化」とはどういうことか。
ブランドを買うことは信頼を買うことに等しい、ということを考えていただきたい。
品質、デザイン思想(傾向)、価格帯、主にその点が堅実に守られることで信頼というものが発生してくる。当然質が下がったり価格帯に変化が生じることでブランドは信頼をなくすリスクもあるが、信頼されているブランドはほぼ同条件の競合商品があったとき、理屈の上では優先的に買われることになる。
「ブランディングとは、商品やサービスのあるカテゴリーにおいて、自社がどのような姿勢で事業展開しているかを一貫性をもって訴え、他者とのポリシーやテイストの違いを明確にして、その共感者(ファン)を獲得してゆくための施策である。
違う言い方をすると、広告が声高に波紋を広げる努力だとするなら、ブランディングは、その声をあげている主体が何ものかを知ってもらう努力といえる」(株式会社ロビンソン)
ファンはその一貫性に疑念が生まれなければ共鳴し、そのブランドの商品(サービス)を好む、というわけだ。
いわばブランドにおけるアイデンティティこそが、ブランドがブランドである条件というべきものなのだ。ややこしい。
アイデンティティ=自己同一性、つまり自身が継続的に同一であること。おお、わかりやすい。
たとえば当ブログがネタに窮してある意味シルバーアクセサリーですからといっておばあちゃんおじいちゃん向けの数珠を紹介しはじめたらもう自己同一性崩壊の危機である。いわば、僕が僕らしくあるために好きなものは好きと言える気持ちを抱きしめられなくなっているのである。マッキーはもうなんか好きな男を好きと言えなくなってしまった感があるので、危機なのである。
話が逸れた。
話が逸れるとこの記事の説得力が薄くなる。ましてや逸れ方がギャグである。つまりアイデンティティを失い看板に偽りができると信頼を欠き、ブランドイメージは落ち、ブランドはブランド足り得なくなるのだ。
さてシルバー業界でクロムハーツの牙城が崩せないのはなぜか。シルバーマニア的には崩れているかもしれないが現実に興味の強い人でなければ他のブランド名はほぼ知られていない。それはたとえばファンの中では「ゴシッククロスならクロムハーツ」「スカルならピッグ、フロッグ」などとあるにしろ、大局的には「シルバーアクセといったらクロムハーツ」なのだ。
そしてメディアや各大規模ショップの取った手法はオピニオンリーダーを立てることだった。つまり、有名人をブランドの広告塔にすることで食い込んでいく手段を選んだのだ。
現実に大手のシルバーショップサイトなどを見ると、ほぼ例外なく提供アーティストの名前が出る。特にメディア出演率が目立つ。なにしろTVで大写しになれば間違いなくファンは興味をもつし、ロックミュージシャンであれば雑誌などでも扱いやすく、またファン層としてもとりわけ興味を持ちやすく、さらに言えば購買に至りやすい人間である確率も高い。
のみならず最近では芸能人コラボレーションなども目立つ。デザイナーでもない芸能人とコラボレートしてどうすんだ。っていうかどうコラボレートしてるんだ。
では、なにが必要なのか?
いかんせん市場の狭さがネックになってくる。売れることを主眼にしているブランドがそう多いとは思えないが、いずれにしても売るためにはより広く世界を広げていく必要がある。
ブランディングにおいて、継続的であることや内容の充実は言うまでもないが、ネーミングや付随するストーリー、キャッチフレーズも重要になる。名は体を表す。もちろんネーミングは各ブランド凝っていることだろう。しかし、裏に凝りすぎても誰にもわからんので、ちょっとかっこつける程度ならあまりマニアックな名前にすべきではない。本当に自分の思いを載せられるメッセージ、あるいはわかりやすい名前。
ストーリーとかキャッチコピーというと難しいが、やはり取っ掛かりでブランドコンセプトがわかるということは大事。ガボールのなんちゃらっつうブランドがやたらと多く、また売れてもいるのだが、その善悪はさておきそう言った「なんか大御所っぽい」ストーリーをつけるのは結構でかい。
「イヤー地味にチョコチョコやってるんですけど、物には自信があるんで。あはは」なんて言っても誰にも響かない。商売なんてごり押しでもしなきゃ誰にも知られず消えていくんだから。
はっきり言って人目についたもん勝ちというか、人目につかないものを買う人はほとんどいない。探さないと見つからんのだもん。
シルバーにおいて「俺は商売でやってるんじゃない、売り方なんて知ったことかー」なんていうままなら、美術展でもやっていたほうがいい。10万ちょい出せばそれなりの画廊で出来る。
でも案外売れちゃうかもしれんな…結構入るのよ、意外かもしれんけど。
とはいえそれも展示会告知が大事になる。誰も知らん行事では通りすがりの上さらに暇を持て余している人でなおかつ入り口で興味を引かなきゃならない。客引きはしんどいです。
結局何事も広告しないと始まらない。シルバーのブランドなんて学校で教わる知識じゃないんだから。口コミで広まるにしても取っ掛かりを作らなきゃいけない。
雑誌は最近確かにつまんない。数社の大手が牛耳っているから。だけどそれを糾弾しても、「広告」というもののニーズが消えない以上、競合社は何らかのプロモーションを求められている。
商売は需要と供給で成り立つ。需要に応えているのが大手ばかりなのだとしたら・・・手法の是非はあれど、結局大手ショップや裏のあるブランドが業界を支えているということにもなる。
露出力の乏しいブランドは強い革新性と明確な独自性、そして一貫した方向性を打ち出していかねばならない。
地道にがんばっていればいつか誰かが気づいてくれる、と思っていて留まっているうちは、知名度も顧客もそう変わらない。
市場が開拓中であり、大手のプロモーション戦略が一本槍である今が機会だと思う。潜在顧客を大手が囲い込んでしまったら、いよいよ後発ブランドはマイナー路線を余儀なくされかねない。
その後シルバーそのものの一般認知が上がっていけば選択の時代もくるだろうが、それまで現在後発でがんばっているブランドが持ちこたえられる保証はない。根強いファンのみを頼りにするわけにもいかないだろう。
まだ言い尽くせていないので、意見がある方はガツガツ言ってくださいませ。なにしろ漠然と浮かびまくってくる思いがまとまらんのです。