2005年08月19日

職人とオーダーメイド

昨今「自分らしさ」の旗印の下にオーダーブームが業界問わず目立つ傾向にある。若い世代にいたるまで本物を見る目が養われていると評されることが多いが、今回あえて疑問を投げかけて考えてみたい。
あえてするまでもなく以前より時折気になることがあった。シルバーなんかでは特に一点もの至上主義のようなところがあって、それはマーケットの狭さに反比例するような数量限定だとかシリアルナンバー重視の傾向に窺い知ることが出来る。元来この手のコレクター小物の類は深夜番組の通販で寺門ジモンでも見ればわかることだがレアであることによる優越感みたいなものが世間一般に浸透している節がある。もとをただせば限定によるものではなく人気ゆえ品薄のアイテムを所有している優越感(エアマックスが好例)に端を発するのだと思うが、そもそも物の良し悪しと限定数にそれほど強い関係はない。
第一シルバーなんてもとからあまり在庫を抱えないのに限定もへったくれもない。受注生産と一点ものオーダーとの差は自分以外の他人に渡るか否かに過ぎないようにも思える。一点物の方がデザインが優れる道理はないし、そもそもブランドのオリジナルのセンスが自分の求めるものに合致していればいちいちオーダーで注文つける必要はない。
既成のアイテムに求めるものがないというならば自分でデザインすれば済む話で、技術屋としての職人を欲するだけであるならそれもいいだろう。ここで「何処何処というブランドのオーダー品」との決定的な差が生まれる。オーダーメイド>レディメイドという格付けは僕はある面では制作者の冒涜になりえるものだと思う。
シルバーの場合、確かに一点ものでしか作れないものというのもある。鋳造による量産品では細密なデザインはつぶれてしまうという技術的な問題があるからだ。しかし、コピーによって量産できなくても同様のデザインを作ることは出来る。フェザーを全て鏨で彫るアイテムがあたとして、それは一つ一つ彫っているから全てが一点物であるといえるが一方で同じデザインであるとも言える。分野を変えれば衣服や革製品は鋳造のようなことは出来ず全て縫わなければいけないのだからこれと同じ形式で作られていることになる。
また、彫刻作品という観点から言えば制作者自ら一点ものを作る意味を持って制作するというケースもある。顕著なのはファヴリルハーツだ。この場合の一点物は制作者のセンスの結集であり、ユーザーの「自分専用感」はどうだっていいことだ。
むしろ僕はこのような一点ものにこそ価値を感じる。かといって量産しようと思えば出来るものを一点しか作らないのでは前述の無意味な限定商品でしかないので、そのあたりは制作者は真摯に取り組むべきだろう。
財布を探している時に、アイソラに細かな話を問い合わせたことがあった。ベテラン職人や海外の革業者と本格的に取引して一点一点仕上げているブランドだ。物を見る目がついているというのは嘘だ、という根拠のひとつにこのレザー商品を色々見ているうちに日本のマーケットは一流品を駄目にしているのではないかという疑問を感じたことがある。フェラガモやらダンヒルやら日頃行かないような店を覗いてはチェックしたものの、どれも確かに奇麗ではあるがはっきり言ってがっかりしたのだ。クロムなめしが普及したせいなのか知らないが、せっかくの上等であろう革を型押しだのエナメルコートだの無駄にしてしまっているようにしか思えない。これでは使い込んでも味が出るどころか単に擦り切れて劣化するだけだ。
現実にヴィトンのエピのベルトがすっかり味が出るどころか表面の皮膜(塗料?)がぼろぼろ剥げて惨めなことになってきている。内張りは合皮だったりナイロンだったりでフルレザーはまるでない。その方が耐久性がいいというが、使い込んだ合皮や化繊がどれだけ悲惨なことになるかは通常の衣類を思えばわかるだろう。
日本人の特徴としてよく言われるのが、革に自然な傷や焼印の跡、皺をはじめ天然皮革の特徴が現れることを嫌うということだ。海外のショップではそれによる返品がしばしばあるという。伝聞だが。
それこそなぜレザーを求めるのか、ということになってくる。それはシルバーでも、ロジウムコーティングやチタンコーティングなど中身が銀である意味ないじゃないかというような商品が一般的であることに等しい。オーダーメイドなどという癖に、個性がついているものには手を出さない。これが本当に目の肥えたオリジナル志向といえるのか。
色々なブランドやメーカーでカスタム品の例が掲載されていたりするが、単に既製品と違いをつけようとしただけのようにしか見えないものは非常に多い。掲載ともなればますます特権意識にもなろう。粗雑な作りでも手縫いの、手彫りのハンドメイドといわれただけで超高級財布や名作彫刻のように売り買いされるレザークラフト、シルバーアクセ。ブランドネームと所有欲だけでのオーダーメイド。
どうも疑問を感じつつある。

疑問を投げかけ、次回へ続く。


posted by 遼 at 02:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 所感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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